肩こりや腰痛の患者様で、ストレッチをする方は多いです。しかし、「このやり方はちょっと・・・」と思うことも多いので、まずよくやりがちな良くないストレッチの方法を述べてから、そもそものストレッチの考え方について書きます。
よくあるあまり良くないストレッチ方法
痛くても頑張る
痛くてもそれを無視して、頑張ってストレッチをするのは良くないことが多いです。関節の痛みが全くなく、至って健康、若さも十分、筋肉を伸ばさなければならない目的がある場合は、良いかもしれません。しかし、そのような場合は、年齢を重ねると少なくなるでしょう。
痛みは、体の危険を知らせるシグナルなので、安易に無視をしてはいけません。さらに痛いときは、体がこわばり、筋肉が硬くなることも多いため、筋肉を伸ばす環境には不向きです。痛みがするほど伸ばすと、筋肉がそれに対抗して、縮もうとする反射(Ib抑制)が高まるため、逆に硬くなることも考えられます。もっと悪いと、伸ばしすぎて筋肉が切れることや、関節に痛みを生じさせる場合があります。よって、痛みはほどほどでやや痛気いが気持ち良いくらいが一番おすすめです。
効果がないけど、とりあえず続ける。
なにごともまずやってみることは大事ですし、運動に関しては体に気持ち良いことは、体にとって正義であることが多いです。しかし、体に関することで、「誰々が言ったから痛いけど、とりあえず続けてみる。」のは、1週間程度なら試すのはありかもしれませんが、効果がない場合はそれを超えると本当にその体操が良いか疑問です。そもそも良い運動療法や手技療法は、すぐに効果が出ることは珍しくないので、効果がなければ、本当に効果があるのか考える必要があります。痛くてがんばって続けることは、もちろん肩こりや腰痛が良くなる場合があります。しかし、痛いことは関節や筋肉に負担をかけているケースも考えられるので、痛い運動やストレッチは体が悪くなるリスクも忘れてはいけません。
何が良くなっているかわからないけど、一つの方法だけでとりあえず続ける。
肩こりや腰痛を改善するためにストレッチを始めるのは、とても良いことです。しかし、何が良くなっているかわからずに、一つの方法でずっと同じ運動を続けるのは良くない場合があります。理由は、肩こりや腰痛などのこりや痛み原因は色々あり、巷の改善させるための手法や考え方は、そのいくつかや、どれか一つのみに対応していることがほとんどだからです。
例えば私が肩こりを例にして本気でストレッチを考えるときは、まず原因を考えられるだけ考えてから、次に解決方法を数通り考え、実施する期間(2〜3日)決めて効果を検証します。具体的には、筋肉のこり、皮膚や筋膜の硬さ、リンパの流れの悪さ、心の問題、内臓疾患などの5つの原因から、それぞれ3〜4通りの方法を決めて行います。よって、最低でも15〜20程度の方法を、それぞれ数日間、つまり45日〜80日の期間試すつもりで行います。(実際に自分が行うなら、おそらく原因を肯定するものではなく、否定できないものに絞って行うので、原因の数は絞ると思います。しかし、治るまで全て試す覚悟で行うので、上記のように記載しています。)
よって、基本的には科学で証明されることは99.9%は仮説で年月とともに容易に覆ることもあり、自分の体も生活習慣、環境、世代によっても違うので、色々試して自分にあった方法を見つけることが必要だと考えます。
ストレッチの種類
ストレッチの種類には大きく2つあります。簡単にいうと止まるか動くかの違いで、静的ストレッチと動的ストレッチの2つがあります。
静的ストレッチ
ゆっくりと筋を伸ばし、反動や勢いをつけないで行う方法です。これは、じっくり座って行うようなストレッチや、一般的に想像するヨガのようなストレッチです。
筋肉が柔らかくなる理由は、脊髄の反射と、物理的な特性の2つあります。まずは脊髄の反射を説明します。ゆっくり伸ばすと、脊髄に電気的な信号が伝わり、その後脊髄からその筋肉に緊張を緩めるように指令が出て、筋肉が緩みます(Ib抑制)。しかし、急激に伸ばすと、筋肉や腱が切れたり関節が損傷する危険性があるため、伸びないように伸びた筋肉が縮むので(伸張反射)、ゆっくり優しく行う必要があります。
物理的な特性とは、簡単にいうと筋肉を継続的に伸ばし続けると、筋肉そのものが伸びることです。あたり前だろと言われそうですが、これも重要な性質です。(筋肉は粘性と弾性の両方の性質をもつため、伸ばせば時間とともに組織が伸びます。)注目すべき特徴は、脊髄の反射では筋肉が緩むことと、物理的特性を利用し長時間伸ばし続けると筋肉自体が伸びることです。
動的ストレッチ
運動をしながら、筋肉を伸ばすストレッチです。これは、ラジオ体操や、運動前に大きく手足を動かす軽い準備運動のような運動をするストレッチです。
このストレッチは、運動前に行うことが効果的なので、運動のパフォーマンスを上げるために行うストレッチとして最適です。このストレッチの中にも種類があり、筋肉が伸びる理由を2つ紹介します。
一つは、一つの筋肉を曲げると、逆側の筋肉が緩む作用です(Ia抑制)。具体的には腕を曲げる時に、腕を曲げる筋肉が縮むと、脊髄からそれと同時に腕が伸びる筋肉を緩めるように指令が行くという作用です。
二つは、筋温の上昇です。これは、筋肉がポンプのように動き、交感神経が活発になることで、筋肉の血液循環が増え、筋肉の温度が高まります。温度が上がると、筋肉の粘りが減る(=筋肉の長さが変化しやすくなる)ので、筋肉の収縮しやすくなるのと、神経筋伝達速度も向上します。また温度の上昇に伴い筋肉が柔らかくなるので、筋肉が伸びやすくなります。
ストレッチの目的
ストレッチの目的は、大きく分けて6つあります。具体的には、柔軟性の改善、筋肉が柔らかくなる、疲労回復、血流増加、傷害予防、スポーツパフォーマンスの向上です。これらの目的を達成するには、ストレッチの方法も工夫しなければなりません。これらの目的について書きます。
- 柔軟性の改善
これは筋肉が柔らかくなるとほぼ同義ですが、柔軟性の改善と筋肉が柔らかくなることは同じようで違います。柔軟性の改善は筋肉だけでなく、関節、皮膚など、別な組織が関わってきます。余談ですが、皮膚が硬くて動きにくい場合もありますので、もしその傾向がある場合は、皮膚は筋肉と同じような反射などはなく、物理的に伸ばす必要があるので、できるだけ多く関節を動かすような静的ストレッチを90秒以上やることがおすすめです。
- 筋肉が柔らかくなる
筋肉を柔らかくするには、どのストレッチでも良いですが、それぞれ伸びる理由が違うので、どのように筋肉を伸ばしたいかを考えてストレッチを選ぶ必要があります。例えば、筋肉をただ伸ばしたいのであれば、時間をかけて静的ストレッチをすれば良いです。もし、肩こりで柔軟性と血液の循環が悪いのであれば、有酸素運動の要素を取り入れて、動的ストレッチがするのが良いです。
- 疲労回復
疲労回復は、色々と諸説ありますが、運動の前後ともに効果があります。特に運動後に行うのが効果的と言われています。半日や3日立っても、疲労回復の効果があるので、疲れたらストレッチをやってみるのがおすすめです。しかし、運動後の疲労回復効果はあるけど、少しだけという研究結果もあるので、万人が疲労回復のためにストレッチをするのが良いということではなさそうです。
- 傷害予防
傷害予防に関しては諸説あり、否定的な論文も多いです。軍隊で行った大規模の研究では、ストレッチングの前後で傷害予防に関して、有意差は見られなかったとする研究結果もあります。しかし、その他の運動やトレーニングを組み合わせるとは現在は良いと言われるので傷害予防をしっかりしたい場合は、ウォーミングアップとストレッチングに加え、筋力トレーニングやプライオメトリックス、固有感覚トレーニングを組み合わせて行うのが良いと言われてます。
傷害予防の観点でいうと、足首が上がりにくさがある場合は、かなり傷害の発生率が上がるので、もし足首の上がりにくさがある人は、まずは足首を上げるようにストレッチをする努力が必要です。
- スポーツパフォーマンスの向上
スポーツパフォーマンスに関しては、動的ストレッチがおすすめです。動的ストレッチを行うと、パフォーマンスは落ちずに、むしろ向上するといった研究もあるので、どのストレッチをするか迷ったら、動的ストレッチで関節を痛めないように動かすものを選べば無難です。静的ストレッチはパフォーマンスを落とす可能性があると言われていますが競技によっても様々だと言われています。ジャンプの競技では90 秒以上行うとジャンプが小さくなるという研究もありますが、短距離走やランニングについては変わらないという研究もあり、自分の競技と傾向を踏まえて、どのストレッチを行うべきかを考えた方が良いです。
今回ストレッチについて、色々書きましたが、ストレッチの種類や方法も色々ありすぎるので、今回はストレッチの具体的な方法は書きませんでした。どのストレッチも一長一短なので、ぜひ自分に合うストレッチを探して、試してみてください!